日本学術会議「法人化」法成立への抗議声明
学問と表現の自由を守る会一同
日本学術会議を特殊法人化し、政府の管理下に置く新たな法律が、6月11日に成立した。首相が任命する監事や評価委員など、何重にも政府が介入する仕組みによって、76年間守られてきた学術会議の独立性は根こそぎ奪われ、日本の科学アカデミーは本来あるべき姿を奪われた。
新法では、日本学術会議法前文がすべて削除されて、「平和」の文字が消え、「科学者の総意の下に」というアカデミーを性格づける文言も削除された。新法が学術会議を解体し、軍事研究を中心とする学術総動員体制づくりをねらっていることは明らかである。
そもそも新・日本学術会議法には立法事実が存在しなかった。政府と学術会議の信頼関係を崩したのは学術会議ではなく、2020年の菅首相による学術会議候補者6名の任命拒否であった。その明白な違法行為を逆手にとって新法は、「法人化による独立性」という詭弁で国民を欺き、任命拒否を合法化し、政治権力による学術会議の統制を制度化した。法案の国会審議も理不尽であった。政府は、学術会議の要望も多数の学者や市民の声も一顧だにせず、数々の質問に実質的に何ひとつ答えず、自民党、公明党、日本維新の会の数の力で採決を強行した。この民主主義の冒涜行為である国会審議の過程に対しても強く抗議したい。
学問を尊重しない社会に未来はない。「書物(学問・思想)を焼く人はやがて人を焼くだろう」というハイネの言葉が真実であることは、その後の200年の歴史が証明している。私たちは、これから始まる学術会議へのさらなる権力介入を厳しく監視し、任命拒否をめぐる裁判闘争を支援し、アカデミーを再生させる闘いを続けることを宣言する。併せて学問と思想表現の自由と報道の自由を希求する私たちは、この闘いによって軍拡路線を突き進む政治に歯止めをかけ、日本国憲法に立脚した平和で公正で民主的な市民社会の形成に尽力し続けることを誓うものである。
2025年6月30日