声明文

日本学術会議会員候補
6名の速やかな任命と
政府の権力介入の撤回を
求めます。

日本学術会議の独立性を侵害する政府の法改正方針を直ちに撤回することを要望します。

内閣府は12月6日、日本学術会議と協議を行わないまま「日本学術会議の在り方についての方針」を公表しました。方針では「政府等と問題意識と時間軸を共有」し、会員選考において「第三者の参画」を行い、「内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」と明記されています。この内閣府の方針は、梶田隆章日本学術会議会長談話や、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の社説、および日本学術会議の「声明」(12月21日)で言及されたように、日本学術会議の独立性と学問の自由を著しく侵害するものです。

 さらに12月8日および12月21日の日本学術会議総会における内閣府笹川武総合政策推進室長の説明では、現行の3部構成に加えて第4部を設置すること、直近1月の通常国会に法案を提出すること、第25期の任期(9月末日満了)を1年半ほど延長し、第26期・第27期の改選から新ルールを適用する方針も示されました。日本学術会議の独立性をことごとく無視した拙速で強引な法改正が強行されようとしています。

 日本学術会議法改正の方針は、学問の自由(憲法第23条)の侵害であり、ひいては思想・良心の自由(同第19条)および表現の自由(同第21条)を脅かすものです。

 会員選考と活動の独立性は、世界のアカデミーの常識です。この原則を蹂躙し日本学術会議を政府の御用機関に改変することは、国民の幸福と人類社会の福祉、さらには日本の国益に反することになりかねません。

1.日本学術会議の会員選考と活動に政府が直接介入し、首相による会員の任命拒否を合法化する法改正の方針の撤回を要望します。

2.軍事優先の学術総動員体制への道を開く法改正に反対します。

3.2020年10月の日本学術会議候補者6人に対する任命拒否の理由の説明と速やかな任命を改めて政府に対して要求します。

2022年12月27日

声明文

2021年4月20日

政府自民党は、日本学術会議会員候補者6名の任命を拒否したまま、政権の思うままの学術総動員体制の道具として日本学術会議を改変する改革案を一方的に提出しようとしています。この暴挙に抗議して、私たちは以下の声明を発表します。

わたしたちは、日本学術会議会員候補者6名任命拒否の理由の説明、6名の速やかな任命、そのうえで日本学術会議の自主改革案に即した改革を要望します。日本学術会議は、これまで日本の科学者を代表する国の機関として、科学者の立場で多数の政策提言を行い、日本社会の進むべき道を提示してきました。日本学術会議がときどきの政権の思い通りの組織に改編され、学問の自由が奪われるならば、科学は批判の力を持たない政治の召使となります。私たちは、政治が科学を軽んずれば国民の命を守れないことを新型コロナの危機によって体験しています。そして学問の自由を奪われた社会は闇であり、その闇から真実や法を意のままに曲げる独裁者が登場することにもなりかねません。そのような暗黒の道を避けるために、日本学術会議会員の任命拒否を撤回させ、学問の自由、表現の自由を擁護して、法治主義の大原則に則った政治をとりもどしましょう。

要請

菅義偉首相による日本学術会議会員候補者6名の任命拒否は、日本学術会議法に照らして不当かつ違法な行為であり、憲法第23条の学問の自由の侵害にあたり、ひいては思想・表現の自由に対する政治介入です。今回の菅首相の一連の行為が自由に真理を追求し表現する社会の破壊につながることを憂慮し、以下のことを要請します。

1 菅義偉首相へ

菅首相は、日本学術会議の「要望書」(2020年10月3日)並びに「声明」(2020年1月28日)においても再度要望された2項目、①任命見送りの理由の説明、②任命否された6名の速やかな任命を直ちに行ってください。この2項目の遂行以外に問題の解決はありません。また、杉田和博官房副長官の国会への参考人としての招致を認め、任命見送りの経緯について答弁させることを要請します。

2.井上信治(科学技術政策担当)国務大臣へ

井上大臣は、日本学術会議の改革をもとめていますが、菅首相による任命拒否の理由の説明と速やかな6名の任命がその大前提です。この対応がなされないまま自民党改革案を日本学術会議に提示することは、日本学術会議の独立性の侵害であり、それを擁護すべき担当大臣の職務に反しています。日本学術会議が準備している自主改革案が実現するよう担当大臣としての責任を自覚して対処することを要請します。

3.内閣法制局へ

内閣法制局は、今回の任命拒否について、日本学術会議法の「解釈変更は行っていない」という見解を示しています。「推薦どおりの人を任命する義務が(首相に)あるとまでは言えない」というその解釈は、憲法第65条および第72条、ならびに第15条を根拠に説明されています。かりにこの解釈が成り立つとしても、これは任命拒否ができるという解釈にすぎず、具体的に今回の菅首相による任命拒否が妥当かどうか、妥当とすればその根拠はどこにあるか、内閣法制局の見解を公表してください。

4.政権与党(自民党・公明党)へ

法治国家では政権与党であろうと法を順守しなければなりません。学問の自由の侵害が思想・表現・信仰の自由の侵害に連なることは、いうまでもありません。日本学術会議は、社会と国家の現在と将来に対して科学者共同体として責任を持つ組織であるべきであって、決してその時々の政権に都合のよい組織であってはなりません。この認識に立って、日本学術会議の独立性を擁護し、学問の自由、思想・表現・信仰の自由を尊重する政治を要望します。日本学術会議の自主改革を尊重し、政権与党による政治介入を行わないでください。

5.野党へ

今回の会員候補者任命拒否問題は、安倍政権から菅政権へと継承されてしまった法治主義や学問の自由の破壊を象徴する事件です。この問題の根本的な解決がはかられるまで、国政の最優先課題の一つとして国会審議を尽くすよう要望します。

6.日本学術会議(梶田隆章会長)へ

日本学術会議は、菅首相に2項目の「要望書」を提出するなど、一貫して学者の立場から日本学術会議法を尊重した対応をしてきました。しかし、外にいる人々には、日本学術会議の内側からの声が十分には聞こえてきません。日本学術会議問題は、いまや日本学術会議だけの問題ではなく、民主主義における科学の役割に関する国民全体の問題です。日本学術会議としての見解や方針が一般市民にも伝わるよう、より明確で真摯な意思表明を要望します。

7.メディア関係の方々へ・表現に携わっている方々へ

学問の自由の侵害がメディア統制に直結し、思想・表現の自由の剥奪、独裁国家の成立へとつながることは歴史が証明し、諸外国の事例でも明らかです。今回の問題を軽視することなく、持続的に世論を喚起し続け、事実にもとづく正確な報道を問題が解決するまで我がこととして続けていただくことを要望します。

8.市民の皆様へ

数々の政治家や官僚のスキャンダルや違法行為と比べ、日本学術会議の任命拒否問題はわかりづらく、NOの声をあげにくいかもしれません。しかし、私たちは今回の問題を日本学術会議のことだけとはとらえていません。新型コロナへの対応における無策、経済破綻による貧困と不安の拡大、軍事予算が優先され教育予算と文化予算を上回る政策と、学術総動員体制を画策した日本学術会議問題とは無縁ではありません。この国の社会、経済、文化、学問、教育をこれ以上劣化させないためにも、日本学術会議問題の解決に向けて、関心を持ち続けていただけるよう願っています。